「ソウルの春」がもっと面白くなる!韓国現代史の名作映画まとめ

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8月23日にいよいよ日本公開される大ヒット韓国映画「ソウルの春(原題:서울의 봄)」。全斗煥(チョンドゥファン)元大統領が指揮した1979年軍事クーデター「12. 12 軍事反乱(군사반란)」をモチーフにした映画です。

韓国現代史の名作映画(時代順に)
時系列で民主化に関連する事件を題材にした映画をまとめました。

※「幸せの国」は8月14日公開

この6作品は別々の映画ですが、描かれている歴史はつながっています。
それぞれの作品で描かれている実際の事件を知ると、映画や韓国の歴史の理解がさらに深まると思います。

以下で関連映画の内容と実際の歴史の流れをまとめました。

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歴史の流れ

主要な出来事を年表にまとめました。

西暦できごと描かれている映画
19615月16日、朴正熙(パクチョンヒ、박정희)少将(当時)をはじめとした陸軍将校たちが軍事クーデターを起こす。…「5.16 군사정변(軍事政変)」実権を掌握し1963年に大統領に就任する。
197910月26日、金載圭(キムジェギュ、김재규)中央情報部(KCIA)部長と部下たちが、宴会の場で朴正煕大統領を殺害する。…「10. 26 사건(事件)」
「KCIA 南山の部長たち」
10月28日、金載圭とその部下5人は合同捜査本部長の全斗煥により逮捕される。翌年裁判で死刑判決を受け刑が執行される。
「幸せの国」
12月12日、全斗煥(チョンドゥファン、전두환)が指揮する陸軍の一部が軍事クーデターを起こす。…「12. 12 군사반란(軍事反乱)」
クーデター後、国家保衛非常対策委員会(국가보위비상대책위원회)を新設し実権を掌握。翌80年8月27日、第11代大統領選挙で大統領に選出される。

「ソウルの春」
1980学生や運動家を中心に民主化運動が活発化する。政府は運動家だけでなく関係のない一般人までも投獄、拷問による取り調べを行い、圧力を強める。
「弁護人」
5月18日、光州で大規模な民主化運動デモが発生し、軍隊が実弾発砲で鎮圧を試みる。…「5. 18 광주 민주화운동(光州民主化運動)」
「タクシー運転手」
19871月14日、学生運動家の朴鍾哲(パクジョンチョル、박종철)さんが治安本部の水拷問による取り調べ中に窒息死する。治安本部は隠蔽を試みたが事件が発覚。国民による怒りと民主化への要求が高まる。

6月10日、ソウル・明洞で大規模デモが開催される。前日9日に学生運動家の李韓烈(イハニョル、이한열)さんが警察が発射した催涙弾を頭部に被弾し重体に陥った事件が大きなニュースになり、民主化要求デモは全国に拡大(イハニョルさんは翌月5日に死去)。

「1987」
6月29日、政府与党、盧泰愚(ノテウ、노태우)代表による実質的な民主化宣言。翌30日、全斗煥大統領がこれを受け入れ民主化が実現する。

大まかな流れを見たところで、それぞれの映画でどのように描かれているか見ていきましょう。

映画の内容と実際起きた事件

「KCIA 南山の部長たち」:朴政権〜大統領暗殺

1979年10月26日、金載圭(キムジェギュ、김재규)中央情報部(KCIA)部長が、宴会の場で朴正煕大統領を殺害する。…「10. 26 사건(事件)」
「南山の部長たち」

あらすじ
1979年10月26日、側近によって大統領が暗殺された。なぜ暗殺は計画・実行されたのか。政府内部の軋轢や衝突を実話と創作を織り交ぜて描く。

見どころ
イビョンホンが演じる主人公キムギュピョンのモデルは金載圭(キムジェギュ、김재규)というKCIA(中央情報部)の部長です。なぜ彼が朴大統領(朴槿惠パククネ元大統領の父)を暗殺したのかはいまだに謎が多く、その過程を事実と創作で描いたのがこの作品になります。ライバルとの対立、元KCIA部長の失踪、歴史を変えたUターンなど、基本的な物語の骨格は全て実話です。

「ソウルの春」:全斗煥の軍事クーデター

1979年12月12日、全斗煥(チョンドゥファン、전두환)が指揮する陸軍の一部が軍事クーデターを起こす。…「12. 12 군사반란(軍事反乱)」
クーデター後、国家保衛非常対策委員会(국가보위비상대책위원회)を新設し実権を掌握。翌80年8月27日、第11代大統領選挙で大統領に選出される。

「ソウルの春」

あらすじ
「成功すれば反逆、成功すれば革命ではないですか!」
1979年10月26日、独裁者とも言われた大韓民国大統領が、自らの側近に暗殺された。国中に衝撃が走るとともに、民主化を期待する国民の声は日に日に高まってゆく。しかし、暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)は、陸軍内の秘密組織“ハナ会”の将校たちを率い、新たな独裁者として君臨すべく、同年12月12日にクーデターを決行する。一方、高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシン(チョン・ウソン)は、部下の中にハナ会のメンバーが潜む圧倒的不利な状況の中、自らの軍人としての信念に基づき“反逆者”チョン・ドゥグァンの暴走を食い止めるべく立ち上がる。

見どころ
朴大統領の暗殺後、国の支配権を掌握しようと全斗煥率いる軍内の私設組織「ハナ会(하나회)」が起こした軍事クーデターを止めようと奮闘する軍人たちの姿をモチーフにしたのが「ソウルの春」です。朴大統領暗殺後、果たしてソウルに春はやってきたのか?
韓国でこのクーデターは「12. 12(십이 십이、シビシビ)」と言われ激動の現代史の中でも大きなポイントになっています。上映当時、韓国では鑑賞中に憤怒のあまり心拍数が上がりアップルウォッチの警告が出たという人もいたほど、国民の熱い反応がありました。

【キャスト】
ファンジョンミン…全斗煥(チョンドゥファン、전두환)をモデルにした「チョンドゥグァン(전두광)」を演じる
チョンウソン…チャンテワン(장태완)をモデルにした「イテシン(이태신)」を演じる
…ノテウ(노태우)をモデルにした「ノテゴン(노태건)」を演じる

配信状況(2024年8月現在)
→8月23日より日本劇場公開

「弁護人」:民主化運動期

1980年学生や運動家を中心に民主化運動が活発化する。政府は運動家の投獄、拷問による取り調べなどの弾圧を行う。「弁護人」

あらすじ
1980年代の釜山、金もコネもない税務弁護士ソンウソクは卓越した手腕で釜山イチの売れっ子弁護士として有名だった。有名企業からのスカウトも入り、全国区の弁護士の仲間入りを目前にしていた。ある日、苦学生時代に食い逃げしたクッパ屋の主人から息子ジヌが事件に巻き込まれ裁判を控えていると助けを求められる。断りきれず面会だけでもと拘置所に向かったウソクは、そこでジヌの衝撃的な姿を目撃し、誰もがやりたがらなかった事件の弁護を決心するが…

見どころ
ソンガンホが演じる主人公のモデルは盧武鉉(ノムヒョン、노무현)元大統領です。彼の弁護士人生の実話をもとに作られています。盧武鉉は釜山で金儲け主義の税務弁護士をしていましたが、反政府の疑いをかけられ投獄された学生の事件(釜林事件、부림사건)を担当し、学生の体に拷問の痕を見て強い衝撃を受け、人権弁護士へと変身を遂げます。死後いまだに人気の高い盧武鉉元大統領ですが、なぜ彼が国民から高い支持を受けるのかこの映画を見るとその理由がわかるのではないかと思います。
最大の見どころはなんと言っても法廷シーンでのソンガンホの熱演です。国の息がかかった裁判官や検察官に妨害されながら正義を貫こうともがく弁護士の姿は韓国映画史に残るシーンとして、いまだにバラエティやトーク番組で話題に登ることが多いです。人気ドラマ「ウヨンウ弁護士は天才肌」でも、「『弁護人』見たでしょ?」といった台詞が登場します。

配信状況(2024年8月現在)
…残念ながら、現在見放題配信中のサブスクはないようです。DVDレンタル、韓国Netflixでは視聴可能です。

「タクシー運転手」:光州事件(5.18 光州民主化運動)

本予告
 ソンガンホコメント映像
1980年5月18日、光州で大規模な民主化運動デモが開催され、軍隊が実弾発砲で鎮圧を試みる。…「5. 18 광주 민주화운동(光州民主化運動)」
「タクシー運転手」

あらすじ
全斗煥政権下で民主化運動が激化する中、光州で主婦や子供までもが参加する大規模デモが開催され、政府・軍部が実弾を使って弾圧しようとする「光州事件(5.18광주민주화운동)」が発生しました。
その情報を耳にした外国人記者が実際に光州で何が起こっているかを撮影・取材して世界に報道しようとソウルに降り立ちます。客を光州まで送れば大金をもらえるという話を聞いた1人のタクシー運転手は、意気揚々と向かいますが…

見どころ
政治・社会問題に距離を置いていた平凡な一人のタクシー運転手が、温かく熱い光州の人々に出会い、彼らが軍に無残に殺されていく様子を目撃し、人々を守るべく命懸けの行動に出るまでの壮絶な物語が圧巻です。
韓国の現代史、民主化の歴史の土台には光州の人々がいると言っても過言ではありません。この映画を見ればその理由がわかると思います。
この映画が公開されたことがきっかけで、当時のタクシー運転手本人が名乗り出たことも話題になりました。(残念ながらその時すでにヒンツペーター記者は亡くなっており、再会は叶いませんでした)

配信状況(2024年8月現在)
・Netflix
・Prime Video
・U-NEXT
・hulu

「1987 ある闘いの真実」:学生拷問死から6.10民主抗争まで

1987年1月14日、学生運動家の朴鍾哲(パクジョンチョル、박종철)さんが治安本部の水拷問による取り調べ中に窒息死する(朴鍾哲 拷問致死事件、박종철 고문치사 사건)。治安本部は隠蔽を試みたが事件が発覚。国民による怒りと民主化への要求が高まる。

6月10日、ソウル・明洞で大規模デモが開始。前日9日に学生運動家の李韓烈(イハニョル、이한열)さんが警察が発射した催涙弾を頭部に被弾し重体に陥った事件が大きなニュースになり、民主化要求デモは全国に拡大(イハニョルさんは翌月5日に死去)。

「1987 ある闘いの真実」

あらすじ
1人の大学生が治安本部に連行され拷問による取り調べ中に命を落とす事件が発生。それを隠蔽しようとする警察や政府、事実をありのまま記録すべく抵抗する医師、真実を追求する検察官、隠蔽を防ごうと命懸けで情報提供する市民や刑務官、検閲や報道規制のなかで何とかして真実を報道しようとする新聞記者、そして明るみになった真実に激怒し立ち上がる一般市民の姿を描く。

見どころ
一人の大学生の拷問死が民主化運動に関心の薄かった市民までをも動かしていく流れが非常にダイナミックに描かれています。韓国を代表する主演級の俳優が次々と出てくることでも有名です。登場人物の豪華さやストーリー展開など単純に1本の映画としても「面白い」と思える作品です。

配信状況(2024年8月現在)
・Prime Video
・U-NEXT
・hulu

そして韓国で「幸せの国」がまもなく公開!

ファイナル予告編
1979年10月26日、金載圭(キムジェギュ、김재규)中央情報部(KCIA)部長と部下たちが、宴会の場で朴正煕大統領を殺害する。…「10. 26 사건(事件)」

10月28日、金載圭とその部下5人は合同捜査本部長の全斗煥により逮捕される。翌年裁判で死刑判決を受け刑が執行される。
「幸せの国」

そして今月14日、最新映画「幸せの国(原題:행복의 나라)」が韓国で公開されます。主役は「賢い医師生活」のチョジョンソク、裁判を受ける暗殺者は「パラサイト」で世界的に有名になったイソンギュンが演じます。故イソンギュンさんが遺した最後の遺作になります。

「16日間拙速に勧められる、大韓民国最悪の政治裁判が始まる」…朴大統領を暗殺した金載圭(キムジェギュ、김재규)の部下の裁判の過程をモチーフにしたのがこの映画です。
イソンギュンさんが演じる役名は「パクテジュ(박태주)」です。彼のモデルになったのが金載圭の部下パクフンジュ(박흥주)です。

政府や軍部の強力な圧力のもと行われた不公平な裁判で、被告人を救うべく奮闘する弁護士の姿を描いています。

どれも見応えがあって面白い。

「南山の部長たち」- 475万人動員
「弁護人」- 1137万人動員
「タクシー運転手」- 1218万人動員
「1987」- 723万人動員

そして「ソウルの春」は1312万人動員となっており、すべて大ヒットした名作映画です。
そのためどれもエンタメとして十分に楽しめる作品になっています。
歴史に詳しくない方、そこまで関心がない方にも自信を持っておすすめできる作品です。

縦のつながりを意識することで、作品ごとの雰囲気やその当時の時代背景が感じられてより作品が楽しめるのではないかなと思います。

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