「まだ始めてもいないのに…」というフレーズはドラマやバラエティでちょくちょく出てきます。
自然な韓国語表現とその理由、そして皆さんからいただいた回答例もご紹介します!
正解は…
最初に正解を発表します。
正解は…
・아직 시작도 안 했는데…
・아직 시작하지도 않았는데…
この2つが正解です。
使われている単語
「まだ始めてもいないのに…」をパーツごと分解してみましょう。
・まだ
・始める
・〜して
・〜も
・〜ない
・〜のに
それぞれに当てはまる韓国語はこうなります。
・まだ:아직
・始める:시작하다
・〜も:도
・〜しない:안 -다 or -지 않다
・〜のに:-는데
ポイント①:否定形の表現
最初のポイントは「〜ない」という否定の部分です。
否定形が作れないと出来なさそうだね。
動詞の否定形は「안 -」と「-지 않다」の2種類です。
ここの学習がまだという人は、ぜひ下のページを参考にしてください。
ここで、「시작하다」は「시작을 하다」の略ということを理解しましょう。
시작は「始まり、開始」という意味の名詞です。
「開始をする→開始する」という流れで「시작하다」になっています。
なので、否定形「始めない」は
・시작(을) 안 하다
・시작하지 않다
の2種類となります。
ポイント②:「〜もしない」
次のポイントは「〜も」の位置です。
「〜しない」に「〜も」をつけて「〜もしない」という表現をする時は、
・~도 안 하다
・~하지도 않다
というふうになります。
上と合わせると、「始めない」の表現は
・시작도 안 하다
・시작하지도 않다
の2つになります。
ポイント③:〜のに
3つ目は逆説表現「〜のに」の韓国語です。
逆説は主に「-는데」と「-지만」の2つがあります。
どう違うの?
-지만の方が堅い表現なので、何か公的な場で説明する時などに使います。
普通の日常会話では-는데の方がよく使われます。
「まだ始めてもいないのに…」の表現を使う場面で、日常で普通に使うときは「-는데」を使うことがほとんどです。
ただ何かの説明で「まだ始めてもいませんが、〜という状況が予測されます」のように堅い表現をする時は「-지만」を使うこともあり得ます。
そして「-는데」の使い方は、動詞の語幹+는데となります。
ポイント④:なぜ過去形なのか
「まだ始めてもいないのに」
・아직 시작도 안 했는데
・아직 시작하지도 않았는데
日本語だと「〜いない」だけど、韓国語は過去形になってるね。なんで過去形なの?
「まだ〜していない」は、韓国では「아직+過去形」で表現します。
「まだAしていない」ということを日本人は「Aをしない状態で今にいたる」と今の状況を優先的に見るのに対し、韓国人は「Aをしない状態で今にいたる=経過した時間の中でAを実行しなかった」という過去の事実を優先して見るのだと思います。
今回の表現も、韓国語では「今にいたる前の時点で開始していなかった」という理解で過去形を使うのだと思います。
「まだ〜していない」という状態を、今の状況として表現するのが日本語で、“過去に実行しなかった“という事実で表現するのが韓国語なんだね!
ポイント⑤:2つの正解の違い
「まだ始めてもいないのに…」
・아직 시작도 안 했는데…
・아직 시작하지도 않았는데…
言い方が2種類あるってことだけど、この2つに違いはあるの?
「안-」と「-지 않다」は長さの違いです。
短く言える方が、日常ではよく使われます。
詳しく学びたい方は下のページをご覧ください。
おまけ:分かち書き
募集した回答の中で多かったのが「아직 시작도 안했는데」と안をくっつけて書く回答です。
もしテストで回答したら❌になるでしょう。
안の表記ルール上「안하다, 안했다」とは書けません。
しかし、日常レベルでは「안했는데」と書く韓国人は非常に多いです。
YouTubeやTwitterでは「안 했는데」と書く人の方が少ないかもしれません。
なのでもし「“아직 시작도 안했는데“はどうですか?」と聞かれたら、
「日常では自然だけど、正しい表記で書くべき場では안の後にスペースを空けようね」と答えます。
多かった間違い
インスタグラムで今回の表現をどう作文するか、学習者の皆さんから回答を募集しました。
皆さんの回答と、間違っている部分や不自然な部分の解説をしたいと思います。
間違いが多かった部分でまとめていきます。
誤答例1:않은데
逆説「-ㄴ데」を否定「-지 않다」に使うとき
・動詞+지 않는데
・形容詞+지 않은데
になります。
「시작하다(始める)」は動詞なので、않은데は使えません。
誤答例2:시작해도
「-아/어 도」は「〜をしても」という意味の表現で、「〜してもいない」という否定の表現には使いません。
誤答例3:없는데
「없다」は「存在の無」の「無い」を意味します。
否定の「〜しない」には使いません。
誤答例4:아닌데
아니다は「名詞+아니다」と名詞の否定に使います。
下のページで復習してください。
誤答例5:「〜も」がない
他の表現や文法は合っていますが、「~도(〜も)」の要素が抜けている人も多かったです。
誤答例6:아직도
「〜も」をつけようと「아직도」とする人がいましたが、「아직도」は「いまだに(〜だ)」という意味になるので、「まだ始めてもいない」にはちょっと合いません。
また、아직도を使った場合、「始めても」の部分でも「도」が必要なので、「아직도 시작도~」のように表現が重なります。その読みやすさの観点からも、아직도を使うのは避けるべきと思います。
※日本語でも「〜と思います。〜と思います。」と同じ表現の多用は読みにくさから避けるべきと言われますよね。
例えば「いまだにスタートできてないんだよ」と言いたいときは「아직도 시작 못 하고 있어」というふうに使うのは自然です。
みんなの回答と解説
全部はご紹介しきれないですが、皆さんから頂いた回答をチェックしました。
どこの理解が抜けているのか、なぜ間違ったかを確認してください。
自分の回答をみてほしい!という方はQ&Aページにお寄せください。
・아직 시작도 안 하는데/아직 시작하지도 않는데
…最後の部分は過去形が自然です。
・아직 시작하지 않는데
…「도(〜も)」の要素が抜けているのと、過去形が自然です。
・아직 시작도 하지 않은데
…「〜もしない」はこのように「~도 하지 않다」とも表現できます。しかし、「-ㄴ데」は「動詞+지 않는데/形容詞+지 않은데」となるので、文法的にここで「않은데」は❌になります。そして過去形の「않았는데」が自然です。
・아직 시작도 안 해는데
…「-는데」は「語幹+는데」なので해는데にはなりません。
・아직 시작하지 않았는데
…「도」が抜けています。
・아직 시작해도 없는데
「-아/어 도」は「その行動をしても」という意味で、否定の「〜しても(〜ない)」には使えません。また、「없다」は「存在の無」を意味する「無い」で、否定の「〜ない」ではありません。
・아직 시작하고도 없는데
…없는데については上記参照。「-고도」は「Aをしてなお、Bする」という用法の文法で文脈上合いません。
・아직 안 시작했는데
…도(〜も)の要素がありません。
・아직 시작해도 아닌데
…「해도」については上記参照。아니다は「名詞+아니다」と、名詞の否定で使います。(詳しくはこちら)
・아직 시작하기도 안 하지만
…「-기도 안 하다」という文法はありません。ちなみに「-기도 하다:〜したりもする」という文法ならあります。-지만は堅いので-는데の方が使われることが多いです。
・아직 시작해도 아는대
…해도については上記参照。아는대は、まず「-는데」のスペルミス。否定形も上記参照。また、아는데だと「知ってるけど(알다+는데)」になります。
・아직 시작도 안 했는데도
…「-는데도:〜するのにも関わらず」は、「まだ始めてもいないにも関わらず〜」と後ろに他の文が自然に繋がるなら使える場面もあるかも知れません。